「んっ!・・・ぁはっうぅ・・・あ・・・」 ぴちゃ、ぴちゃ・・・ 「あうぅ・・・ぅあっはぁぅぅ・・・」 月が、ぼんやりとあたりを照らしている。街道から少し外れた、裏路地。周囲は倉庫などが並んでいて、この時間にこの道を通るような物好きは、あまりいないだろう。 アロワードは、名も知らぬ少女の股間に顔を埋めていた。ぴちゃぴちゃと、彼の舌がたてる音と、少女の喘ぎ声だけが、夜にかすかなアクセントを加えている。 「はぅ、はうぅぅ・・・」 トロンと蕩けた瞳を、夜空に向けたまま、少女は快楽に身を委ねている。 アロワードの舌は、慣れた様子で彼女のクリトリスを責め続ける。出来れば、このままオルガズムに達して欲しい。 「うぅあぅ・・・ひゃっ!・・・ああんっ!あんっ!」 幾ら人通りが無いとはいえ、外での情事にしては、少女の声は抑える気すらないほどに大きい。 「あああぅっ・・・あああっ!」 だが、少女の声が大きくなるにつれ、アロワードは内心、ほっと安堵していた。 (良かった、このままイッてくれそうだ) だが、人に見つかるのは確かに厄介だ。それが女性だと、なおさら悪い。アロワードは急ぐことにした。 剥き出しのクリトリスを、歯で軽く擦ってやる。 「!!・・・っっああああ!・・・あああああぁぁ〜〜〜〜!!」 びくんっ、と、少女が弓なりに反る。念のために、もう少し刺激を与えておこうと、今度は軽く、優しく噛んでやる。 「ひぃっ!!・・・ひああああぁぁぁ!!・・・あぁっ!・・・っあぁっ!!」 びくんびくんっ、と、少女の体が脈打つ。 「イケたかな・・・?」 はぁはぁと、息を乱しながら、アロワードは少女から口を離した。その顎から、ゆっくりと、糸を引きながら少女の愛液が垂れる。 「ごめんね・・・綺麗に忘れるんだよ?」 そう言いながらアロワードは、いまだヒクヒクと痙攣を続ける少女の、虚ろな瞳を覗き込んだ・・・ 「よぉ、眼帯のにぃちゃん! 昨日は良く眠れたかい?」 宿屋の親父が、にこやかに声を掛けてくる。 アロワードにとって、その呼ばれ方はいつものことだった。彼の左目には、黒い眼帯が付けられている。 「えぇ・・・まぁ、なんとか」 昨夜は、そんなに遅くまで出歩くつもりは無かったのだが、運悪く、まずいタイミングであの少女に「見られて」しまった。おかげで、宿に帰り着いたときには、親父を起こして店のカギを開けて貰わなければならなくなってしまった。申し訳なく思う。 「そうか。昨日は旅の装備の買い出しに行ってたんだろう? もう出発するのかい?」 「えぇ・・・路銀も心もとないし、そろそろ目的地に向かわないと、ね」 アロワードは旅人だ。ある理由で、故郷からの旅を続けている。 「残念だなぁ〜、にいちゃんがウチに泊まり始めてから、嘘みてぇに華やかになったんだがなぁ、この宿も」 そういいながら、親父は彼に朝食を出すために厨房に入っていく。その言葉に、アロワードは苦笑するしかない。 確かに、彼は容姿の良い方である。漆のように潤いをたたえた黒髪も、どこか翳を持つようなその容姿にぴったりと合っていて、彼を見学するのが目的の若い娘たちが、毎日のようにやってくるようである。 「明日には、出発します。ようやく、通行許可証がもらえそうなので・・・」 「そうか。この国もなぁ、ガルバス様がいらっしゃった時は、もっとドッシリと構えてたもんだが・・・あのお方がいなくなってからと言うもの、すっかり王様が脅えちまってやがる。旅するのも大変だな」 まったくだ、と、アロワードは思う。故郷で聞いたこのイグリア国の噂と、いま自分が実際にいる場所が、本当に同じ国なのか疑わしくなってくるくらい、この国は静かだった。昔は、通行許可証も即日発行されていたらしいのだが、今はいちいち、王宮へ連絡をいれ、身元の証明を確認できなければ、出国することすら出来ないのである。 アロワードは手続きに2週間かかったのだが、これでも早い方であるらしい。故郷では高名な貴族の家柄なのだが、それが幸いしたと言うことであろう。 ガルバスというのは、数年前までこの国の筆頭将軍だった人物である。大陸全土に名声と勇猛を轟かせたその男が、姿を突然くらました理由については諸説紛々あるのだが、なんにせよ、アロワード個人にとっては、迷惑な話であった。 (まぁ、いい・・・) 朝食を摂る為に食卓に着きながら、アロワードは溜め息をついた。 イグリアの勢力地を越えて、しばらく進めば、彼の目的地にたどり着ける。今は、それだけが彼の心の支えだった。 「ようやく、解放される・・・」 そう呟くと、自然と指が眼帯に触れていたことに気付き、慌てて手を食卓に載せた。 「やっぱり、いい男は仕草総てがかっこいいもんだな、うん」 厨房から、妙に感心したような親父の声が聞こえてきて、アロワードはまた苦笑させられた。 |