軽く首筋にキスをする。 カリッサは、少し体を固くするが、アロワードに総てを任せている。 瞳の暗示は、女性の自我までを奪うものではない、と、アロワードは聞いている。ただ、植え付けるのだ。絶対に逆らえないほどの愛情を。 「恥ずかしい?」 これは、意地悪で言っているつもりは無い。ただ、確かめたいのだ。自分を苦しめている力の正体を。 「は・・・い・・・」 だが、聞かれるカリッサの恥ずかしさは増大する。 突然芽ばえた自分の感情に戸惑いつつも、アロワードには逆らえない。こんなに明るい時間に、路上で、全裸になっている。今からアロワードに抱かれると思うと、とてつもなく嬉しいが、恥ずかしさが消える事はない。それを、アロワードの言葉でまた意識してしまう。 アロワードも、いつもとは少し違うシチュエーションを新鮮に感じる。 カリッサは、金属鎧を普段着ているだけあって、街にいる同じ年頃の女性たちよりも、少し筋肉が多いかもしれない。だが、鎧に押さえられていたバストは意外と豊満だし、野性的に鋭く感じていた瞳の印象が、潤むと一変してセクシーに見える。 「だいじょうぶ、結界はちゃんと張れたから、誰も来ないからね?」 珍しいな、と、アロワードは独白する。自分は、初めて女性のことを可愛いと感じているかもしれない。 キスをするたびに、震えるカリッサの反応が嬉しい。偽りの感情であれ、自分に嫌われたくない一心で我慢しているのだろうと思うと、愛しさが芽ばえてくる。 「今は・・・全部僕に任せて?」 「はい・・・」 何故、自分はこんなにもこの男に惹かれるのだろうか? そんな疑問すら、耳に息を吹きかけられると消えてなくなる。体から力が抜けるのと同時に、身体の芯が熱くなるのを感じる。カリッサは、考えることを止めた。このまま、アロワードの好きなようにして欲しい。それが、自分の喜びになるのだから・・・ 抱き締めていた腕をほどいて、キスは続けながら、右手をカリッサの胸に滑らせる。 「あ・・・」 カリッサの声から、固さが抜けているのを確認して、アロワードは優しく胸を揉み始める。 「ん・・・」 「痛かったら、ちゃんと言ってね?」 「はい・・・ん・・・大丈夫・・・です」 アロワードの優しさが嬉しい。だから、カリッサは言ってしまう。 「もっと、強くても・・・大丈夫」 かぁっと、体温が上昇する。恥ずかしさが、込み上げる。そして今度は心配になる。イヤラシイ女だと思われなかっただろうか? 「ん、わかった」 アロワードは微笑む。カリッサの表情の変化を見ていると、彼女の心の中が透けて見えてくるようだ。カリッサとの出会いは、アロワードにとっても、人生の転換期のように思えた。義務感だけで情事を行ってきた自分とは、明らかに違う自分がいるのを感じる。 耳元から、首筋から、少しづつ唇を当てる位置を下げていく。カリッサを立たせたまま、左手で彼女を支え、アロワードは地面に膝をついた。 右手は、カリッサの左胸を揉み続けている。そして、唇は。 「んあっ・・・」 びくんっ、と、カリッサの膝がゆれる。アロワードの唇は、彼女の乳首をしっかりと捕らえていた。舌で、優しく転がす。 「あっ・・・んんっ!・・・んっ!」 どう形容すればいいのか。甘い痺れにも似た快感が、アロワードの舌の動きにあわせて、全身を駆け抜けていく。カリッサは思わず右手を口元に当て、人差し指を噛んで声を出すまいと堪えてしまう。 「だめだよ、カリッサ。我慢しないで、声を出してごらん?」 左腕は、彼女を支えたままだ。カリッサの右腕を下ろさせる事は出来ないが、アロワードが言うと、カリッサは自分から手を離した。恥ずかしさで、真っ赤になっているその表情が可愛い。 「両手は、僕の頭にのせておくんだ。離しちゃダメだよ?」 従順に、アロワードの言葉に従う。そして、カリッサは気付いた。この格好では、まるで自分からアロワードの頭を自分の胸に押さえつけているように見えてしまう。 「あぁっ!?」 狼狽するカリッサをそのままにして、アロワードはまた、乳首をもてあそび始める。 「あぁん、あっ・・・んんっ!」 しかも、今度は転がすだけじゃない。軽く噛むことを、織り交ぜ始めた。 「ふぁっ!?・・・んぁ・・・あぁぁ!?」 さっきよりも強い刺激に、カリッサの膝はがくがくと崩れそうになるが、見た目にそぐわない力強さでアロワードの左腕がしっかりと支える。 遠慮がちにおいていた両の手が、今はアロワードの頭を本当に離すまいとしっかり押さえられる。 路上に全裸で立たされる恥ずかしさ、その格好のまま、胸を舐められる恥ずかしさ、しかも、自分からそれを求めているような格好で・・・カリッサの心は、恥辱で爆発しそうだ。 「ああぁん、ああん、んんんっ!」 だが、声を押さえることが出来ない。自分が感じていることを、アロワードに伝えたい。 ふいに・・・アロワードの唇が、カリッサから離れる。 「はぁ・・・はぁ・・・!?」 荒い息をつきながら、カリッサは心配になる。左胸を優しく揉んでくれていた手も、離れてしまう。きゅうっと、カリッサの胸が締め付けられる。 「あ、あの・・・?」 思わず、問いそうになった時、アロワードの手が、彼女の太ももにそっと触れた。 「っ!」 ぴくん、と膝が震える。 そして、アロワードは優しく微笑みながら、顔を見上げる。カリッサの目をしっかりと見て。 「カリッサ・・・溢れてるよ」 その言葉に、これ以上の恥ずかしさは無いと思っていたカリッサの心が、更なる羞恥でいっぱいになる。 「あぁ・・・」 泣き出してしまいたいのに、アロワードの嬉しそうな顔が、泣かせてくれない。彼の笑顔が嬉しい。自分の表情が今どうなっているのか、カリッサには分からなかった。 アロワードが、地面についていた膝を起こし、また立ち上がる。カリッサの顔を見つめると、 「可愛いよ、カリッサ」 そう言ってキスをした。 恥ずかしさが全部、どうでも良くなるくらいの幸福感が、カリッサを包み込む。 「あの・・・わたしも・・・わたしも、したい」 だから、カリッサは勇気を出してそう言えた。 |