MINE V
from the aspect of SYUJI


 しどけなく緩み、熱を帯びてきたゆりの身体が何を欲しているのか。
 シュウジには十分判っていた。
 判っていて、敢えてそこへの到達を遅らせる。
 そうすることで、ますますこの身体が精神と共に昂ぶってくるのを知っているからだ。
 右手で豊かな膨らみを弄びながら、首筋から肩へそしてもう片方の膨らみへと舌を這わせる。
 手ではやや強く。
 舌はじらすようにゆっくりと。
 そのアンバランスさが、ゆりの身体を更に溶かしていく。
 膨らみの先端を口に含むと、ゆりは小さく痙攣した。
 一瞬にして先端が硬く尖る。
 それでもまだ、ゆりは声を押し殺し、荒くなってきた息遣いだけが、快感を得ていることを示している。  右手を膨らみから離し、指先だけを使って身体のラインを辿る。
 尻が大きいことを気にしているが、その分、腰の括れが際立つ。
 ジーンズのサイズが合わないことを嘆いていたが、これなら仕方ないな、と、思い出して心の中で笑った。
 薄く脂肪が付いた下腹部に指を移動すると、ゆりは両腿に力を入れる。
 本当は、逆のはずなのに。
 触れて欲しいところは、その奥にあるはずなのに。
 拒否するように脚を閉じた。
 シュウジの指は、腿の外側に移動する。
 触れるか触れないかのぎりぎりの距離を保ちつつ、外側から膝の上へ、そこから上へ、繰り返し根気良く指を動かす。
 やがて、腿の力が解けてくる。
 ゆっくりと指を内腿へ移動させ、膝の内側から上へと、すうっと指を這わせる。
 また、ゆりは小さく痙攣し、完全に腿の力を抜いた。

 シュウジの左手は、ゆりの指に絡まったままだ。
 最初は動きを封じるためのものだったのだが、後にはゆりから強く絡めてきた。
 手を離すと、今度はシーツを握り締める。
 どうやら、どこかに掴まっていないと不安なのだろう。
 シーツから指を外させて、自分の左手を与えた。
 その方がゆりが安心するだろうという思い遣りからだった。
 腿の力が抜けると同時に、握り締めていた指の力も緩まった。
 それでも、絡めた指は離れそうにない。
 体勢を整えるのに、やや不安定ではあるが、それでも安心させてやりたい、と思う。

 右手を下腹部からその下の繁みへあてがい、そのまま指を脚の間に滑らせると。
 ・・・ぴちゃ、という音が響いた。
 びくっとゆりの身体が震え、目を見開く。
 シュウジの舌と手の動きも止まる。
 指はまだ、中へは達していない。
 あくまで、ゆりの入り口に触れただけだ。
 言ってみれば、唇の外側であり、口の中ではない。
 なのに、水の音。

「ゆり、」
 含んでいた胸の先端から口を離し、呼びかけた。
 ゆりは驚いたような怖がっているような恥じているような複雑な表情で彼を見上げている。
 シュウジは口を耳元まで移動して、息がかかるように囁いた。
「・・・・・・溢れてる」
 途端、ゆりはぎゅっと目を閉じ、空いている片手で顔を覆った。
「ほら」
 シュウジは指をあてたり離したりして、ぴちゃぴちゃと猫がミルクを舐めるときのような音を立てる。
 ゆりは否定するように首を横に振るが、ゆりのそこ、は、もう、潤っているとか濡れているとか言うレベルのものではなく、シーツに染み渡るほどに、液体が溢れ出していた。
 今初めてそこに触れたばかりだというのに、ゆりの身体は、十分すぎるほどに準備を整えていたのだ。
 閉じようとする脚の間に、シュウジは自分の脚をさしいれ、閉じることが出来ないように体勢を固める。
 そして、その液体を掬い取り、そのすぐ上の、一番敏感な部分に塗りつける。
 びくびく、っとゆりは今までにない痙攣をし、大きく仰け反った。
「...っ!」
 声にならない声を上げ、慌てて口を押さえる。
「声出して、いいよ」
 またも、ゆりは首を横に振る。
 だが、溢れ出た液体を、敏感な部分やその周りに塗りつける度に、痙攣と声にならない悲鳴を上げ続けた。

「イクってこと、知らないの」と、以前ゆりは言っていた。
 それは出逢ってきた男たちが悪かったのだと、思う。
 これだけ敏感で激しい反応を示す身体をもった女が、本当の悦びをまだ知らないのは、そこまで連れて行ける男がいなかっただけなのだ、と。
 反面、ゆりを不憫に思う。
 反応が良いあまり、恐らく男たちはゆりが十分満足しているのだと勘違いし、あとは己の欲望を満たすことだけに集中してしまうのだろう。
 だから、ゆりが頂点に達する前に、男たちは満足してしまう。
 ゆりも達しているのだと勘違いしたまま。
 俺は、違う。という自信をシュウジは持っていた。
 俺なら、ゆりを連れて行くことが出来る、と。

 ゆりは、間違いなくマゾヒストだ。
 だから、じらされたり恥ずかしい言葉をかけられると、羞恥しながらも同時に快感を得ている。
 それを活かさない手はない。
「ねえ、ゆり。いやらしい音がしてるよ。いっぱい溢れてくるよ」
 音を立てながら声をかけると、本当に液体が溢れ出てくる。
 言葉と音に感じている証拠だ。
 演技では決して出来ない。
 顔を覆っている手の上から、キスをすると、やっと口から手を外した。
 ただ、今度は目を覆ってしまった。
 今の自分の状態を認めたくないのだろうか。
「・・・・・・や・・・」
 ゆりの唇から、声が漏れた。
「え?何?」耳を近づけて声を聞き取ろうとする。
「・・・や・・ぁ」
「や?いやなの?止めて欲しいの?」
 愛撫の手は弛めないまま、意地悪く尋ねる。
 首を横に振って、ゆりは否定する。
「どうして欲しいの?」
「・・・て・・」
 口は動いているが、語尾しか聞き取れない。
 来て、と言っているのは唇の動きで判る。
 けれど、その言葉をゆりの口からはっきりと言わせたかった。
「聞こえないよ。何?」
「・・・れ・・て」
 今度は、シュウジが驚いた。
 ゆりは、来て、ではなく、入れて、と言っているのだ。
 なんて大胆で淫靡な言葉。
 喘ぎ声さえ出せず、唇を噛み締めていた女が、自ら「入れて」と言っているのだ。
 驚きと共に、喜びがあった。
 自分を信頼して身を任せてくれているという喜び。
 そして、自らもっと快楽を得ようとしている女の部分を引き出せた喜び。
 だが。

 ここで、シュウジのサディズムが牙を剥く。
 もっと辱めれば、もっと快楽を得るはずだ。
 そう確信していた。
「もう・・・いれて」
 今度ははっきりと聞き取れる声でゆりが訴えた。
 目を覆っているゆりは、今他の感覚器が異常に敏感になっている。
 シュウジの指や舌だけではなく、息も声も、全てが愛撫だった。
 それを知っているシュウジは、また、耳元に口を近づけ、冷静な声で、こう言った。
「何を?」
 ゆりは顎を反らし、言葉に反応した。
 右手にまた、暖かい液体がかかる。
「何を入れて欲しいの?」
 ゆりは唇を噛み締めている。
「何が欲しいの?教えて」
 ようやく口は開くが、言葉にならない。
「教えてくれなきゃ、判らないよ。何を、入れて欲しいの?」
 我ながら恐ろしいと思うほど、シュウジは冷静な声で尋ねる。
 ゆりはまた唇を噛み締めて、首を振る。
 質問を変えることにした。
「じゃあ、どこに?」
「・・・!」
 口には出せないだろう言葉が答である質問を次々に投げかける。
 その質問にその都度反応するゆりを見ているのが、面白いとさえ思う。
 やっぱり、俺って、Sだよな。と改めて実感する。
 ゆりは意を決したかのように、目を覆っていた手を離してゆっくり下へ降ろしてくる。
 そして、愛撫を続けるシュウジの右手の上に自分の手を重ねた。
 ここだ、と、手で示しているのだろう。
 けれどシュウジは許さない。
「わかんないよ。どこ?」
 そろそろと彼の手を辿って、その場所を示そうとする。
 シュウジはさっと右手を引いてゆりの手首を掴み、その場所へ導いた。
 自分のその場所を、直に確かめてしまったゆりは、あまりにも淫らになってしまった自分の状態にすくんでしまい、慌てて手を引いた。
「そう。ここ、に入れて欲しいんだ」
 小さく頷くゆりを見ながら、質問を続ける。
「それじゃ、ここに、何を入れて欲しいのか、教えて?」
 ゆりの口は半開きになってはいるが、声を発する様子が見受けられない。
 何と言っていいのか、判らないのだ。
 日本共通の表現でいいのか。それでも数種類の言葉がある。
 地元の言葉で表現するか。それは通じないかもしれない。
 なにより、それらの言葉を頭の中に思い浮かべ、それを発声する自分を想像するだけで、羞恥心は増大して、ますます口にできない。
 足の先まで痺れるような快感を得ながらも、頭の中でそんなことを考える。
 しかしやがて、度重なる快感の波にのまれ、考える力もどんどん失われていく気がしていた。
「ゆり、何、を?」
 シュウジの再度の問いかけに、つい
「・・・あなた、の・・」と答えてしまい、自分の吐いた言葉にまたも昂ぶる。
 シュウジはすぐさま畳み掛ける。
「俺の?俺の、何?」
 攻めは絶好調だった。
 ここまで来た、という達成感で、彼自身も興奮を隠せない。
 だが、ゆりはそれっきり言葉を発しなくなった。
 自らの指に噛み付き、言葉を発することを拒否し始めた。
 恐らく、思わず答えてしまったことが、恥ずかしくて堪らないのだろう。
 しかし、このままでは、中途半端になってしまう。
 作戦を変更することにした。
「ねえ、ゆり。言えないなら、別の方法で教えてくれない?」
 ゆりは、すぐにそれを理解した。
 荒い息遣いで、半分泣きそうな顔をしながら、
 片手の指に噛み付いたまま、絡めていた反対の手の指を解き、シュウジの肩から胸へ、
 そしてそのまま彼のやり方を真似るかのように、指先だけでシュウジの身体を辿っていく。
 それ、に指先が辿り着いたとき、びくっと一瞬手を引いた。
 シュウジの"それ"は、ゆりと同じように、既に十分に準備が整っていた。
 掌全体を使って、それに手を沿わせたとき、思わずため息が漏れる。
 いつからこうなっていたんだろう、と考える。
 自分は彼によってここまで昂めてもらえたが、彼には何もしてあげていない。
 何か、してあげたい、と思うと同時に、根元から先に向かって指を滑らせていた。
 だがすぐに、その手はシュウジに捕まり、それ以上触れることを許してもらえなかった。

「そうか、これを入れて欲しかったのか」
 小さく、二度三度ゆりは頷く。
 ゆりを上から覗き込むような体勢を取り始めると、ゆりは彼を迎え入れるように、自ら脚を開いた。
 シュウジは、臨戦態勢に入っている自分をゆりの入り口にあてがった。
 彼自身が触れたのを確認したゆりは、これからの快楽を期待してるのか、既に恍惚とした表情になっていた。
 その表情を見て、また意地悪をしたくなった。
「じゃ、もう一度、言って」
 やっと噛み付いた指を口から離したゆりの耳元に囁いた。
「入れて、って言ってごらん」
「・・・い・・・て・・」
「聞こえないよ、もう一度、言って」
「・・いれて、ください・・」
 その言葉と同時に、シュウジはゆりの中に入る。
 溢れ出る液体で十分すぎるほど緩和したゆりの入り口は簡単にシュウジを迎え入れた。
「・・・は・ぁ・・」
 顎を反らし、ため息とも喘ぎ声ともつかない声をゆりが発した。
 先端だけが収まったところで、またぴたりと動きを止める。
 迎え入れた悦びで緩んでいたゆりの表情はみるみる困惑に変わる。
 閉じていた目を微かに開いて、見上げると、自分を見ているシュウジと目が合い、慌ててまた目を閉じる。
 困惑からか眉間に皺がより始めたゆりに、また囁く。
「入れたよ。これでいいの?」
 いいわけがない。
 勿論シュウジは判っている。
 ゆりに、言わせたいのだ。どうして欲しいのかを。
 もしゆりが何も答えなかったら、このままじっとしているつもりだった。
 自分だってこのままでは快感を得られないが、これはひとつの賭けだった。
 いちか、ばちか。
 ギャンブラーだなあ、いや、この場合チャレンジャーか。と、また自己分析してみる。
 思ったとおり、ゆりは言葉を発さず、首を横に振る。
 もどかしげに、うらめしげに。
 シュウジの背中に回した手に力を込める。
「こうじゃないの?」
 ゆりは無言で頷く。
「どうして欲しい?俺、どうしたらいい?」
 わざとらしいが、そのわざとらしさが更に快感を呼び起こすのも知ってる。
 なかなかゆりは口に出さない。
 手がどうして欲しいかを語っているのだが、シュウジは許さない。
「何も言わなきゃ、どうしたらいいかわからないよ」
「・・・い・れて・・」
「入れてるよ。ゆりの中に入ってるよ」
「・・・違う・の」
「違うって、何が?」
 耐え切れず、今までとは違ったはっきりした声で、ゆりは言った。
「奥まで、いれて。突いて」
 やっと引き出した言葉に、彼自身も興奮が増す。
 無言のまま、一気に、ゆりを貫く。
「・・・あッ・・・!」
 ゆりの口から声が漏れた。
 大きく背中を仰け反らせ、ぴくぴくと痙攣する。
 同時に、その中も大きく波打ち、彼を締め付け、奥から熱い液体がほとばしった。

 ・・・まさか、達した、のか?
 今の状況を把握しかねた。
 確かにゆりの中は呼吸するかのように波打っているが
 今、奥に到達したばかりだ。まだ早すぎる。
 表情を確認すると、昇りつつある状態だと思われる。
 よし、と意を決して動き始めた。
「・・・あ、あ、・・ん・・・」
 動きに合わせて、ゆりの口から声が漏れる。
 自分では声が出ていることに気付いていないのかもしれない。
 時折、背中を反らせ小さな痙攣を起こす。
 ゆりの中も、シュウジを咥え込むかのように、蠢く。
 やがて、ゆりの呼吸が不規則になってきた。
 声も出ず、息苦しそうに顔をしかめる。
 そろそろだ。
 シュウジはそのタイミングを熟知していた。
 何度か確かめるように突き上げると。
「・・・っあ・・っ・・くっ・・・!」
 苦しさの極まりのような声を上げて、ゆりの全身が引き攣った。
 ゆりの中は彼を飲み込むように圧迫し、波打っている。
 両手をゆりの背中に差し入れて、思いっ切り抱きしめた。
 ゆりも必死に抱きついてくる。
 堕ちていくのを恐れるかのように、すがりつく。
 シュウジは動きを止めてゆりを抱きしめる。
 何度か大きな痙攣を起こしたあと、ゆりの身体は崩れ落ちた。
 彼自身は達していなかったが、それでも満足感はあった。
 ゆりの髪を撫でながら、表情を垣間見ると、放心したように目を閉じ、うっすらと涙を流している。
 もう一度、強く抱きしめた。

 しばらく繋がったまま抱いていると、ゆりが口を開いた。
「...来て」
「?」
 今度は、質問を投げかける前に、何かを訴えた。
 ゆりはシュウジの肩にキスをして、もう一度言った。
「もっと、来て。あなた、の、頂戴」
 目の奥に淫靡な光が輝いている。
 どうやら、ゆりの中で目覚めた雌は、暴走を始めたようだ。


END

V(ゆり編)に戻ります  目次に戻ります  Wに進みます 
動画 アダルト動画 ライブチャット